展示会に成功する

 
 
 

「展示会に成功する」のは、ひとえに「準備」にかかっています。アメリカビジネスをこれからスタートする日本企業の皆さんには、「完璧な準備」は不可能です。出展を通して、「アメリカのビジネス体制」を確立していくことが、何よりも重要です。このレポートでは、「展示会に必要な準備」について述べていきます。今後、出展を重ねていく中で、アメリカのビジネス体制を整えていってください。販売体制、ブランディングが整っていけばいくほど、売上は確実に上昇していきます。

1.  出展の位置づけ


「展示会成功のポイント」

 展示会の準備には色々な細かい要素があるのですが、特に重要なコアは次の3点です。これが、アメリカ展示会に成功する「核心」です。初回出展は、これらは準備できていないでしょうが、当初からそれを射程に入れた出展を行うのです。

 アメリカのライフスタイルに合う商品で、アメリカ商品より優れた要素を持っている。

 プレゼンテーションを重視する。(ブランド、Webサイト、SNS,営業ツール、パッケージ)

 ビジネスの土台(販売、流通、回収)を作る。


「注文をとるために」

 展示会成果は、ビジネス準備の内容と比例します。販売を促進する為には、きちんとした「販売体制の準備」が基本になります。注文をとるためには、受注体制だけではなく、アメリカビジネスに準備する全ての要素が必要なわけですが、あわててやっていくべきではありません。アメリカビジネスの経験の積んでいく中で充実させると良いのです。作成するものがたくさんあるので、それらは全て「アメリカの情報」や「アメリカの感覚」を身につけていく中でこそ、的確で良いものができていきます。


「マーケットを正確に知る」

 アメリカ戦略を作成する時に、前提として誰でもが、「売上げを早く作りたい」という考えをもつでしょう。それは無理の無いことですが、海外マーケットでの経験が少なく、アメリカマーケットの状況がまだわからない時点では営業展開を急ぐことは逆に試行錯誤になりやすくなるのです。あまり先走ると、アメリカマーケットにおける販売体制、組織体制が固まっていないので、バイヤーから敬遠される、不要なトラブル、ある時点から前進しない・・ということが起こります。

 一朝一夕には新しいマーケットに向けた体制はできないので「ゆとりをもった計画性」が必要になります。いわば、「企画と営業のバランス」がアメリカでも必要と言うことです。特に、大手小売企業は不十分な準備しかできていない企業とは取引をしません。そのためにも、まず「マーケット全体を正確に把握する」ことが最重要なので、「マーケット・リサーチ」がアメリカビジネスの最初の鍵になるわけです。当初このマーケット・リサーチが不十分だった企業はぜひやり直すことをお勧めします。


「ビジネスの方向性」

 海外マーケットに向けて充分な準備や慣れるためには最低1年はかかります。そして、「ビジネスの土台作り」には約2年はかかるでしょう。つまり、大手小売企業と取引ができる体制を持つには、最低でも3年はかかり、4年目を大手チェーン店との取引開始と考えるべきです。 このくらいの時間をかけて、「着実に前進していく」というイメージでちょうどよいのです。

 初年度、2年目は専門店とオンラインストアとのビジネスを充実する中で、しっかりしたビジネスの体制を形成するのです。この間にも、アメリカのみならず、カナダ、南米、アジア、ヨーロッパなどからも引きあいが来ると思います。次第に販売地域を広げていき、広く浅く顧客を増やしていく中で、厚みのある戦略を形成していくと良いでしょう。

2. 商品戦略

 アメリカのライフスタイルに合った商品,アメリカ消費者の「生活を豊かにする製品」、「生活に必要な製品」が売れるのです。アメリカマーケット開拓に最も重要なポイントの第一は、アメリカに販売する貴社の「商品」です。日本の商品がそのままアメリカでも売れることもありますが、それはまれです。デザイン全体を変える商品、色、サイズを変える商品、パッケージだけを変える商品・・など、商品によって異なってきます。これらをを突き詰めていくのが商品戦略です。


「商品の市場性」

 フォーカスグループの実施が一番良いのですが、それが技術的に難しい場合は、アメリカ・マーケットにおける市場性の測り方は、次のようにして行なうことができます。

 アメリカの販売対象になりそうな代表的な小売店を数店探す。

 その中から貴社製品に近い競合会社を探してください。

 アメリカマーケットにおける「競合製品のリスト」を作成する。(10ページ以上になるはず)

 そのリストには、製品写真、ブランド名、小売店名、価格、サイズなども入れるのです。

 商品リストが出来たら、別ページに価格順の表を作って、最多価格帯、平均価格を出してみてください。

 貴社製品と比較してください。(デザイン、サイズ、色、価格など)→見えてくるものがあるはずです。

 この作業は数日かかりますが、これによって貴社はアメリカマーケットに次第に近づいていけます。そして、貴社製品のマーケット性と課題が浮かび上がってきます。その過程で、自社製品をアメリカのマーケットに合わせて「どのように改良したらよいのか」が見えてきます。それは、色、サイズ、価格などになるでしょう。特に、色がポイントの製品は日本とアメリカの色の使い方の大きな違いに気がつくと思います。


「価格のバランス」

 貴社の商品の価格が、同じカテゴリーのアメリカ企業の商品の価格と全く同じである必要はないものの、極端な差になると問題です。デザインの違い、機能の違い、サイズの違いなどでリーズナブルな価格差があるのはよいでしょうが、飛びぬけて高いということでは、バイヤーは仕入れることはできませんし、店頭に置かれたとしても、手を出す消費者は少なくなります。

 アメリカマーケットに販売する究極の目標は「量の販売」です。展示会出展回数を重ねた結果、いつまでも少量の販売ではアメリカに費やす費用と時間とつりあわないので遅かれ早かれ挫折してしまいます。アメリカ商品の価格を入念に調査して、「量のビジネス」につながるマーケットにあった価格帯を決めることが重要です。これは、単に、「安いほうがいい」ということではなく、マーケットの中でバランスのとれた、そして裏づけのある価格が必要ということです。単に、下からの「コスト積み上げ計算」だけでは不十分です。マーケットから来る価格との両方向からの価格設定が必要です。


「アメリカの国内卸価格」

 バイヤーに提案する価格は、FOB日本価格ではなく、「アメリカの国内卸価格」でなければ、バイヤーは絶対と言ってよいほど注文しません。つまり、当たり前ですが、バイヤーは自分が買う金額=送料、関税、国内経費の全て含まれた国内卸価格・・がほしいわけです。店舗への納入価格が分からないまま仕入れるバイヤーはいません。


「コンテナによる輸出」

 将来的には、大きな注文を「コンテナに入れて納品する」ということが目標ですが、初期段階ではある程度の納品量を想定して「暫定的な送料」を出すわけです。ただし、これは、一般論ですので、できるだけ正確にやりたいということであれば、無論緻密な計算が必要です。

 将来はコンテナ単位の納品を行うので、今からコンテナ単位の送料計算をして、原価を抑えて競争力のある売値を算出するという積極的な算出方法は、大変良い考えと思います。気をつけなければいけないのは、「あまり売れないのだから」と、送料の根拠を少な目の数量にしてしまうと、価格は上がってしまい、本当に少量しか売れないという結果になることです。どちらかと言えば、「ポジティブな算出方法」をお勧めいたします。それは、初期段階では、赤字覚悟で商品を売るという『先行投資』と考えてみてはいかがでしょうか。このあたりは経営判断になります


「商品の選択」

 貴社には、多くの製品があると思います。その中から、展示会に合った製品を選択して、出展するわけですが、「商品選択におけるポイント」をお伝えします。

 アメリカのバイヤーに出来るだけ多くの製品、デザインを見てもらいたいという気持ちは良く分かります。しかし、相手が「既存の取引先」でしたら、それも良いでしょうが、新規取引先開拓の場合は、明らかに逆効果です。展示会会場には、数千のブースがあり、バイヤーはその中から「目新しいもの」「店に必要なもの」を探し回っています。したがって、バイヤーがブースの前を歩くスピードは速く、3秒の間にバイヤーの気持ちを掴まえなくてはなりません。商品があまりに多い場合一つ一つの印象が薄れます。逆に、アメリカマーケットにインパクトの強いものだけに絞ると、分かりやすくなるので「あ!これは面白い」ということになります。


「商品が多すぎるのは逆効果」

 アメリカのバイヤーに出来るだけ多くの製品、デザインを見てもらいたいという気持ちは良く分かります。しかし、相手が「既存の取引先」でしたら、それも良いでしょうが、新規取引先開拓の場合は、2ブース以下の小さなブースでは明らかに逆効果です。展示会会場には、数千のブースがあり、バイヤーはその中から「目新しいもの」「店に必要なもの」を探し回っています。したがって、バイヤーがブースの前を歩くスピードは速く、3秒の間にバイヤーの気持ちを掴まえなくてはなりません。商品があまりに多い場合一つ一つの印象が薄れます。逆に、アメリカ市場にインパクトの強いものだけに絞ると、分かりやすくなるので「あ!これは面白い」ということになります。バイヤーは、「見たい!」と感じ、ブースに足を踏み入れます。まず、特定の製品でバイヤーを引き付けることが効果的ということです。「3秒の戦い」なのです。

 特に大手バイヤーを引き付けるコツは、商品の絞込みです。彼らは、専門性を重視し、「専業メーカー」と取引したいのです。例えば、バスルームのバイヤーでしたら、バスルーム製品に絞って展開している会社から仕入れるのです。色々なカテゴリーを見せるよりもカテゴリーを絞った方がチェーン店バイヤーは魅力を感じます。逆に、専門店バイヤーはいろいろななものを扱っている会社のほうが良いようです。製品の内容も、チェーン店は、アメリカの標準的な家庭全てに売れる製品を求めます。専門店は、自分の感覚に自信があるので、大手小売店で中々売っていない、ユニークなもの、こだわり製品、カラフルな製品を選ぶ傾向があります。つまり、出展企業が現在、どういう取引先を対象にするかによって、商品構成自体も変えるべきなのです。対象を専門店におくならば、専門店向きの商品構成が必要ですし、大手チェーン店が対象ならば、その商品構成が必要です。


「商品構成は慎重に!」

 アメリカのバイヤーは、基本的に保守的で、新規取引先に対する注文には大変慎重です。できるだけ、ミニマム(最小取引開始金額)にするでしょう。ライン全体のボリューム、奥行きを感じさせる商品構成のプレゼンも大切です。「商品を絞る」ことと「奥行きのある商品構成」は一見矛盾するようですが、大切なのはそのバランスです。これも、マーケティングの中で導き出すのです。

3. 組織戦略

 ご承知のように、ビジネスにとって重要なことは、「商品」と「組織」の両輪が安定していることです。片方だけがいかに優秀であったとしても、片方が未熟ではうまく前に進んでいきません。


「誰が売るか?」

 広大なアメリカ市場で「誰が、日常的に自社の商品を売ってくれるか?」という問題です。この課題に答えを出さない限り、、アメリカにおいて継続的な商品販売は不可能です。年二回だけの展示会だけではビジネスはできません。これは、日本企業ばかりではなく、ヨーロッパ企業、アジア企業などアメリカ市場に販売するすべての海外企業共通の課題です。

 バイヤーは概して海外からの出展者には不安を抱きます。それは、アメリカ国内に拠点が無いと、商品の追加注文が出来ない、問い合わせが出来ない、不良品の交換が出来ない、海外に送金する不安などが要因です。アメリカの小売店は、「アメリカ国内取引」を望みます。それは、大手のチェーン店でも同じです。1000店のチェーン店でも、バイヤーは最初100-200店の店舗で、テスト販売を行い、毎週追加注文をして、商品の動きを見たいのです。

 アメリカに、「販売拠点」を持たなければ、実際小売店への販売・流通・回収・営業フォローは難しくなります。小売店と常に連絡を取り、販売業務、流通業務、回収業務を管理する「組織」がアメリカ国内に必要になります。分かりやすく整理すると次のようになります。


「日常的な営業には現地に拠点が必要」

 店舗は、一度だけ注文するのではなく、商品の動きがよければ次々に追加注文する。そのためには、アメリカ国内に連絡先、販売拠点が必要です。小売店に日常的にコンタクトして、営業フォローを緻密に行い、的確な営業活動を行わなくてはビジネスは前進していきません。


「小売店への納品」には現地に拠点が必要

 展示会で注文を得られたとしても、日本から各小売店にバラバラに商品を送っていたのでは、送料倒れになってしまうし、その分を卸し価格に入れたとしてもそれでは小売価格がアメリカの標準価格よりかなり高くなってしまい、売れなくなります。アメリカ国内の「流通拠点」に全量をまとめて送り、そこから全米の小売店に配送すべきです。


「代金の回収」には現地に拠点が必要

 小売店に、前払いで、日本の銀行口座まで代金を継続的に送金してもらうというのは無理があります。一度だけであれば可能でしょうが、毎月のようにというのでは喜んで行う小売店はありません。振り込み手数料は高く、銀行振り込みの手続きにも時間がかかるので敬遠されるのです。アメリカの小売店は通常、アメリカのメーカー、サプライヤーに銀行振り込みではなく「小切手郵送」によって支払いを行っています。アメリカ国内で受け取った小切手を現金化するために銀行口座に入金するには、アメリカ国内に銀行口座を持たなくてはなりません。アメリカ国内に銀行口座を持つには、「アメリカに登録された法人」でなければできないのです。したがって、代金回収を無理なく行なうには現地に拠点が必要になります。これらの理由により、アメリカ国内に販売、流通、回収の「組織」が必要ということになります。


「アメリカの拠点」

 アメリカ国内に拠点を設けるには次のような三つの方法があります。

・ 自社の「現地法人」をアメリカに設立する。

・ アメリカに「エージェント」を設ける。

・ アメリカのディストリビューター(問屋)に販売する。

 自社の現地法人をアメリカに設立し、日本から人を派遣することがこの三つの中ではベストです。しかしながら、初年度から実行するには中小企業にはリスクが高く重すぎる課題です。

 アメリカのディストリビューターに販売することがリスクも小さくベストな方法のように見えますが、実際は価格が高めな日本商品を買い取って、アメリカの小売店に卸しビジネスを行うディストリビューターは中々存在しません。彼らも30-40%の粗利益を乗せるので非常に高くなり、それでは店で売れないからです。実際、日本企業もディストリビューターに小売価格の25%で卸さなければディストリビューターのビジネスが成り立ちません。したがって、日本企業にも無理な話なのです。

 そこで、現実的なのは、アメリカに「エージェント」を設けることです。アメリカ国内に貴社商品をブランドとしてライン全体をしっかり扱ってくれる代理店「エージェント」を探す又は作ることです。将来的に、ビジネスが大きくなっていけば、現地法人設立という道もあります。


「どのようにしてエージェントを獲得するか?」

 多くはありませんが、アメリカには、日本製品を扱ってくれる「日系エージェント」はいます。無論、コミュニケーションがしっかりとれればアメリカンのエージェントでも構いません。問題は、どのようにして探すかですが、次のような方法が考えられます。


(商品の力)

 貴社の商品が、展示会ブースで注目を集め、多くのバイヤーを引きつけていれば、「貴社の商品をうちで扱いたい」という「エージェント候補」が自分から手をあげてきます。これまでにも、「アメリカ市場で売れる商品」であれば、多くの「エージェント候補」が名乗り出てきました。まさに商品力がポイントです。つまり、展示会出展はバイヤーに向けてだけではなく、業界関係者に向けたプレゼンテーションでもあるわけです。


(積極的に探す)

 大部分のエージェントは、IHHS展でブースを出しています。そこを訪問して、資料を見せて、展示会まで来てもらう(ひっぱってくる)という方法です。ブースに来てもらって商談する方が効果的です。最終日には充分可能です。


(知人などの紹介)

 アメリカでビジネスを何かやっている方を紹介してもらい、商品の説明をして、「当社のアメリカ代理店をやってみませんか?」というオファーすることも一つの方法です。レップのビジネスをやっている方は販売のノウハウを持っているので、流通、回収業務を加えるだけなので可能性はより高いでしょう。


「エージェントへの業務委託内容」

 エージェントとの交渉には、まずエージェントの実績を確認する。設立はいつか、自社のカテゴリーに強いか、どういう販路を持っているか・・などです。回収体制、流通体制も重要ですが、特に、代金の売上の回収、保管も委託するので「信用度」「実績」が大切です。さらに、EDI機能を持ち大手小売企業との取引実績があればさらに良いでしょう。エージェントに委託するのは、次の業務になると思います。これらの業務をこなせるエージェントが必要です。

 販売業務・・・展示会や日常的な営業業務

 流通業務・・・輸入者として製品を受け取り、インボイスを作り、各小売店に配送

 回収業務・・・クレジットカードやファクタリングで代金を安全に回収

 カスタマーサービス・・・顧客からの問い合わせ、クレームに対応

4. 販売戦略

 製品によって、または会社の規模によって販売方針は異なるでしょうが、はじめ3年の営業計画の概要はおおよそ次のようになるでしょう。販売計画の基本的なモデルです。


「営業計画イメージ」

(1年目の販売計画の内容)

① 初年度は「アメリカ市場に馴れる」というテーマを持ち、販売組織体制、流通体制構築をめざす。

② ラインにあったエージェントを確保する。

③ 販売対象を専門店とオンライン企業とする。

④ 展示会に出展し、取り引件数を増やしていく。(目標100店)

(2年目の販売計画の内容)

① 「ビジネス体制(販売体制、組織体制、商品体制)の確立」をテーマとする。

② 展示会に出展し、専門店の取引先を増やす。(目標200店)

③ 中小チェーン店を新規開拓し、取引を開始する。

④ ビジネスの土台を充実させる。(ショールーム、EDIシステム、人的ネットワーク)

(3年目の販売計画の内容)

① 営業攻勢を強める。

② 大型チェーン店、デパートへのアプローチを開始する。

③ 専門店300店獲得


「展示会の準備リスト」

 アメリカマーケットで商品の注文をとる時にはいくつかの営業ツールが必要です。かつては、サンプルと、ラインシートさえあれば、充分だったのですが、現在のマーケットでは多くの営業ツールが要求されてきています。継続出展者の場合は、大手小売企業も対象にするためにかなり多くの準備項目となります。一気にはやらずに、展示会ごとに充実させていけばよいでしょう。ここではリストを紹介しますが、その内容は次項で説明します。


「商品関連で準備するもの」

・ カテゴリー選択 

・ 商品構成 

・ サイズ選択 

・ 色の変更 

・ 素材、品質調整 

・ 価格計算 

・ ブランドコンセプト 

・ ロゴ 

・ 商標登録 

・ パッケージ、ラベル検討 

・ 取扱説明書 

・ スプレッドシート作成 


「販促関連で準備するもの」

・ ラインシート作成 

・ フライヤー作成 

・ Webサイト 

・ SNS 

・ 製品写真準備 

・ ライフスタイル写真準備 

・ 動画 

・ カタログ作成 

・ ブランド名刺作成 

・ プレスキット作成 

・ 店頭用フライヤー 


「受注関連で準備するもの」

・ 販売スタッフ準備 

・ PO(受注書)準備 

・ 文房具準備(ペン、ホッチキス、クリップボード、計算機) 


「ブース関連で準備するもの」

・ ブースデザイン準備 

・ 照明準備 

・ ブース・レイアウト 

・ ディスプレイ 

・ デモ準備 


「商談関連で準備するもの」

・ 商品説明内容準備 

・ 資料 

・ プレゼンブック 

・ リアクションメモ 

・ iPad(写真+動画) 

・ フリーサンプル 


「流通関連で準備するもの」

・ ウェアハウス 

・ インボイス作成準備 

・ EDIセットアップ 

・ 在庫体制 

・ 出荷体制 

・ 流通コスト調査 


「回収関連で準備するもの」

・ クレジットカード体制準備 

・ ファクタリング会社契約 

・ 銀行口座準備 

上記で、合計46の要素があります。

5. 展示会準備


「商品関連で準備するもの」

・ カテゴリー選択 

 いくつかのカテゴリーを扱っていても、展示会では一つに絞っていった方がバイヤーの目に留まりやすいのです。それは、バイヤーは専門性のあるベンダーを求めるからです。いくつかのカテゴリーを混ぜてしまうと、インパクトはぼけてきます。

・ 商品構成 

 ストーリーのある商品構成は商品の魅力を引き立てます。商品の力をアピールします。

・ サイズ選択 

 いくつかのサイズがある製品はサイズを限定しても良いでしょう。アメリカ市場はおおよそですが、「大きめのサイズ」が良いでしょう。重さのあるものは、アメリカでは重いほど商品価値を感じるようです。

・ 色の変更 

 アメリカは、「色のマーケット」とも言われ、色が重要な要素になります。伝統的にアメリカ消費者が好む色と、トレンドカラーの研究から色の選択をすると良いのです。トレンドカラーは、アメリカのファッションを調査すると浮かび上がってきます。

・ 素材、品質調整 

 アメリカに合った素材や品質のほうが売りやすいのは当然ですが、生産における素材ロットもあり、そう簡単には変えられないでしょうが、大手小売店との取引が可能になる段階では、アメリカのライフスタイルに適合する素材でサンプルを作成することも、ビジネスの進展の為には必要になってきます。初期段階ではそのままで出展した方が良いでしょう。マーケティングが完成していない段階での中途半端なローカライズは成功しないからです。

・ 価格計算

 アメリカ国内取引に見合った価格が必要ですので、原価+関税+送料というような下からの積み上げ計算と市場調査した段階でのマーケットが求める価格との調整が必要です。特に、大手小売企業に入るためには、大手市場価格帯の徹底研究が必要になります。

・ ブランドコンセプト

 「ブランド」を確立する方が消費者との距離が小さくなります。ブランドの信頼感は、強い販促効果があります。バイヤーも、ブランド単位で仕入れたほうが店内は統一されきれいになることを知っています。ブランドのアイデンティティを文章化して英訳しておくとブランド自体が固まっていきますし、その完成した英文はカタログ、Webサイト製作など色々な局面で使うことができます。ブランドのキャッチフレーズも効果的です。全ての英語は、アメリカンネイティブにチェックしてもらうべきです。

​・ ロゴ 

 ブランドのロゴがきれいにデザインされていて、個性があるほど、ブランド認知力は高まります。アメリカで親しまれるロゴやブランド名が良いのです。日本語でもかまいませんが、アメリカでは使いにくいというようなものは、避けなければなりません。ロゴで失敗すると、全てがやり直しになりますので、充分慎重に決定すべきです。必ずネイティブチェックしてください。辞書に無いスラングも多いからです。

・ 商標登録 

 ブランド名の商標登録は必要ですので、出荷することが確定した段階で、登録手続きを進めてください。日本で取れていても、それはアメリカや他の国では効力がありません。アメリカですでに同じ商標が登録されていても、登録可能性が無いわけではないので、弁護士、特許事務所と相談すると良いでしょう。アメリカは商標に関して使用主義をとっていますので、すでに使っているというのは強いのです。(日本は登録主義)

・ パッケージ、ラベル検討 

 アメリカの小売店は、概して販売員が少ないので、パッケージ、ラベルが消費者の製品選択の重要な基準になります。消費者は、「センスの良いパッケージ」に手が伸びるのは当然ですし、「説明が分かりやすいラベル」に惹かれるのです。

 最近は、多くのメーカーがきれいな写真を多用しています。近年、大手小売店は、3ヶ国語の言語を取引条件にするようになりました。英語、フランス語、スペイン語です。出来ることならば、そのようにしたほうが将来の発展性はあります。隣のカナダ市場ではフランス語はMUSTです。パッケージ、ラベルは、ブランディングの中でも中心課題です。ただ、外国言語にするだけでは不十分で、アメリカ消費者に好まれるパッケージでなくては意味がありません。やたら文字が多い、説明だらけのものは嫌われます。写真をうまく使って分かりやすいセンスの良いものが人気があります。まずは、競争相手のパッケージをしっかり研究することです。

・ 取扱説明書 

 消費者視点に立った「わかりやすい取扱説明書」であれば、その消費者はそのブランドのファンになります。逆に分かりにくいものであれば、「二度と買わない」ということになります。親切な説明書は販促につながります。

・ スプレッドシート作成 

 製品の情報をすべて一覧表にしたものです。オンラインストア、大手チェーンストアとの取引には、必ず必要です。SKU番号、JANコード番号、色、卸価格、MSRP価格、製品の素材明細、製品のサイズ、重さ、1ケースのサイズ、重さ、生産国、製品の特徴、納期など製品に関わる全ての情報です。当初から準備しておくと、バイヤーからの要請に素早く対応できます。大手チェーン店との取引の際は商品登録時に必ず要求されます。バーコードは、日本のEANコード(JAN)で問題ありません。


「ブース関連で準備するもの」

・ ブースデザインの準備

 ブースの広さは、広いほど大手バイヤーは入りやすくなります。ある程度力のあるベンダーと安定した取引したいからです。最低でも2ブース、できたら4ブースあると良いでしょう。それも、しっかりしたカスタムブースを作るほうが効果的です。

 ブースの雰囲気で、バイヤーは関心を持ち、足が止まり、ブースに入ってきます。月並みなブース、センスの感じられないブースではバイヤーを引き付ける可能性は小さくなります。バイヤーを引き付けるインパクトが必要です。そのインパクトは、「商品の分かりやすさ」「色の統一」「トレンドカラーの打ち出し」「デモ」「ディスプレイのセンス」「意外性」「ユニークさ」「楽しさ」「ユーモア」というような要素の表現です。

 バイヤーが敬遠するブースは、「ゴチャゴチャしていてよく分からない」「やたら字が多い」「民族的過ぎる」というようなブースです。旗を立てて、半てんを着て・・というのは論外です。ただ「商品で勝負だ」というのでは、プレゼンに長けているアメリカの競争相手には勝てません。「良い製品はいずれ理解される」というのもよほどラッキーな場合だけです。

・ 照明の準備

 一般的に、明るめのブースの方が華やかさがありバイヤーは入りやすいのです。暗いブース、前面の商品がよく見えない、逆光になっているというブースではバイヤーを引き付けられません。一般的に、3mX3mのブースは、600ワット程度の光量で商品は普通に見えます。1キロワットあれば、明るい感じがします。1.5ワットでかなり明るい感じがします。それ以上ですと、まぶしい、暑いという逆効果です。特に、明るめの色を強調したいという商品群には、明るめの照明が効果的です。壁ライトで後ろからの光だけでは逆光で効果はありません。正面からのパーカンライトが必要です。パーカンライトの光の中心が前面過ぎると、光の半分が外に出てしまいますので注意です。片方のパネルが無いコーナーのブースはライトが反射しないで外に逃げるので多めに計算する必要があります。

・ ブース・レイアウト

 ブースの中にバイヤーが入り、色々見て回るといういわゆる動線を明確にすることも大切です。1小間ブースでは商談テーブルを置くには狭すぎます。展示会にもよりますが、シカゴ展では、立ったままの商談でも問題はありません。2コマ以上ある場合は、テーブル+イスも商談に効果的です。特に、相手が大手チェーン店バイヤーの場合は、時間がかかることが多いので、商談テーブルがあったほうがしっかり話し込みができます。水やチョコなど用意すると時間をかけたい商談にはプラスです。

 レイアウトで注意すべきは、製品を奥に飾ると、スタッフが製品をブロックしてしまい製品が見えないということです。基本的には、前面に「見てほしいもの」を置き、サイドと後ろにその他のものを置くという方が基本です。バイヤーの視線を観察、統計を取ってみると、大部分のバイヤーは最初に「手前のディスプレイ」と「奥のロゴ」のどちらかを見るようでした。ディスプレイ台の高さ、棚の高さは「見やすい」ことに直結します。(普通の市販テーブルでは低すぎる)

 ブース内は、常にきれいにすることはMUSTです。飲み物を置いたり、食事をしたりはブースの雰囲気が壊れます。常に、外から自社ブースを見て、きれいになっているか、ゴチャゴチャしたものが見えないか気をつけてください。ブースは、バイヤーが唯一立体的に見られる貴社ブランドの世界なのです。外から見ると一枚の絵画になるように配慮してください。小さい白布を用意して見せたくない部分を目隠しすると、きれいに見えます。

 花を飾るのは注意する必要があります。花によっては花粉が洋服につき取れなくなりトラブルになることがありえます。多くのブースで花が少ないのはそういうことです。

・ ディスプレイ

 当然、分かりやすいディスプレイがバイヤーを引き付けますが、何もかもを出してしまうのは良くありません。例えば、「価格」です。価格を価格サインで出してしまうと、安っぽいだけでなく、イメージは下がります。極端に安い製品で価格が一番の「売り」の場合は良いでしょうが、そうでなければ、価格はセールススタッフに聞いてもらうほうが、商談のスタートになるのです。

 同じように、フライヤーやカタログも同じで、「資料をくれませんか?」と聞いてもらったほうが会話のきっかけになるのです。前面に資料を積んでおくと、ただ無言で持っていくので効果的でありません。競争相手も取りやすくなります。

 壁にベタベタポスターを貼るという方法は情報過多になりがちで、読む気がしません。良い雰囲気にはなりません。ポイントは、ブースは、バイヤーにイメージを与え、商品そのものを見てもらい、情報はフライヤーで渡すという位置づけが良いと思います。

・ ブース名刺 

 個人の名刺というよりも、「ブースの名刺」が良いと思います。ブース番号、商品の写真が入っていればより効果的。PCで簡単に作った名刺でも十分です。アメリカの名刺サイズは、89mmx51mmで、日本のものよりすこし小さい。したがって、普通の日本の名刺は大きすぎてアメリカの名刺ホルダーには入りません。(個人の英語名刺を作るのであれば、アメリカサイズにすべきです)


「商談関連で準備するもの」

・ 英語版商品説明の準備

 バイヤーがはいってきましたら、「ブランドと製品の説明」が必要です。その説明する内容を正しい英語であらかじめ作っておくと良いでしょう。それは、アメリカ人のセールススタッフの資料にもなりますし、日本人スタッフの台本にもなり、フライヤー、カタログの文章にも使えます。無論、英文のネイティブチェックが必要です。

・ 資料 

 商談の中で様々な資料を見せることがあるでしょう。それは、素材だったり、写真だったり、資料が有効に働く為には、商談のストーリーをきちんと整えておく必要があります。

・ 商談ストーリー

 バイヤーへの商品説明には、順序、流れを決めておくと効率が良いでしょう。ブランドの主な情報、会社の情報、製品の特徴、売れ筋商品、価格帯、納期などです。一つ一つを箇条書きに簡便にまとめておくのです。それを伝えてから、先方の関心のある製品の詳細を説明します。この商談ストーリーは、あらかじめ決めておいて、スタッフ同士で練習するとその効果は倍増します。

・ プレゼンブック 

 写真で見せたいものがあれば、きれいなプレゼンブックを用意しましょう。

・ 動画

 動画をiPadなどで見せるのも商談が弾みますし、効果は大きいでしょう。バイヤーは写真、動画は日常的に見ているので説得力は倍増します。

・ フリーサンプル 

 製品が低価格で無料配布しても良い場合は、フリーサンプルとして準備しておくのも効果はあります。実際使ってみないと分からないものは、さらに効果的です。その場合モノによるでしょうが、500-1000は必要です。

・ リアクションメモ

 商談を行った時は、必ずリアクションメモ(1社1ページ)に名刺を留めて詳細を書いておきましょう。商談内容は展示会が終わると、思い出すのが大変です。商談直後に全ての情報を入れておくべきです。重要度をランク別にして書いておくと、営業フォローが効率的になります。このリアクションメモの数が「展示会の成果」といっても良いのです。セールススタッフに、商談内容を詳しく書いてもらいましょう。この用紙の数が展示会成果=商談数になります。50枚は集めたいところです。100枚になれば間違いなく展示会は成功です。ポジティブな情報だけではなく、ネガティブな情報も「貴重な情報」ですので、書き留めておきましょう。必ず毎日の商談内容をセールススタッフと一緒に確認してください。アメリカ人の手書き英語は読めないことも多いからです。


「販促関連で準備するもの」

・ ラインシート作成

 営業ツールで最も必要なのはこれです。バイヤーは、関心があるラインには「ラインシートをください」ということになります。これが、サプライヤーとバイヤーをつなぐ最も重要なツールです。商品の主な情報と製品写真に加えて、メモ欄を用意しておくとバイヤーはそこにメモします。基本的には、アメリカのバイヤーに渡すものですが、海外から来るバイヤーに対して、FOBJapanのラインシートも準備しておくと良いでしょう。普通、アメリカ用として、200-300程度、海外バイヤー用に50-100という数でしょう。

 ラインシートを作る注意は、将来製品数が増減することが起こるため、ラインシートの日付けを入れておくと便利です。ページ#も入れておくと電話商談がやりやすくなります。レターサイズ横書きではなく、縦書きがバイヤーには便利です。大手チェーン店のバイヤーやアシスタントバイヤーは、有力と思われる企業のラインシートを集め、仕入れ本部でそれを検討するのです。

・ フライヤー作成

 A4サイズ1ページのチラシですが、商談にまで発展しない場合には、これだけを渡しましょう。したがって、会期中分を用意するので、300-600というところでしょう。

 フライヤーのデザインが良いほど効果的なことは言うまでもありませんが、これもあまり文字の多いものだと見てくれませんので、写真を有効に使いましょう。製品によっては、裏表印刷も良いのです。表をイメージを強く、裏に製品情報というように。ラインシートに、名刺とフライヤーをホッチキスでとめて渡すようにします。

・ Webサイト

 バイヤーは展示会から帰ると、同僚や上司に見つけた新ベンダーについて説明しますが、まずWEBサイトを見ます。したがって、初回出展社はともかく、継続出展社、特に大手を狙っているラインはWebサイトの準備はMUSTです。無論、英語版ですが、一番重要な点はWEBサイト全体のテイストです。

 かなり費用をかけたWEBサイトも良いでしょうが、イメージ性だけのWebサイトよりも、具体的に商品情報が分かるほうがビジネスには役に立つと思います。自社で簡単に商品情報の入れ替え、追記、消去が出来るサイトを作ると便利で経済的です。

 これも、写真を多用すると良いのです。世界中のバイヤーや業界関係者が見るようになりますので、近い将来段々と問い合わせが増えてきます。

・ SNS 

 SNSはアメリカの消費者にとってブランドや商品を知り、また一個人としてブランドとつながる場として重要な存在となっています。SNSの種類は多々あるでしょうが、うまく使い分けて、ブランドイメージと情報をマーケットに拡散して行くと良いでしょう。大きな広告宣伝費を使えない中小企業にとっては、SNSの一般化で、ビジネスはやりやすくなっています。ポイントは、時代の流れに沿うことと(出来れば先どりする)、消費者の視点に立つことです。いかに消費者の支持を得るかどうかが、アメリカのビジネスの鍵なのです。

Instagram:ブランドイメージを発信する。

Pinterest:ブランドイメージを表現する。

Facebook、Twitter:ブランドの最新情報を発信する。消費者とのコミュニケーション

 ブランディング方法も大切ですが、重要な点は、ブランディングコアの内容です。貴殿製品が持つアメリカ人がクールと捉えるポインとは何か、をしっかりとリサーチし見定める必要があります。コアが見えないSNSは消費者の心をとらえません。

・ 製品写真準備 

 特に、オンラインビジネスを活用する為には、製品写真はあらかじめ準備しておくと、すぐにスタートできます。写真の質はAMAZONの規定を満たすものであれば、おおよそどのオンラインストアでも大丈夫です。

・ ライフスタイル写真準備 

 Webサイトの充実、SNSでの発信、オンラインストアとのビジネスのためには、ますますこの「ライフスタイル写真」の意味が大きくなってきています。センスの良い、オシャレな写真が良いのですが、ポイントは「アメリカのライフスタイル」を表現していなければ効果は半減ということです。その為には、アメリカ国内で撮影を行うと良いものができます。アメリカ国内にエージェントが出来ると、撮影は難しいことではありません。

・ 動画 

 これも、写真と全く同じことです。ポイントは、製品の良さを表現する背景がアメリカのライフスタイルである必要があります。機能性の高い製品では必要なツールです。

・ カタログ作成 

 きちんとしたカタログは、ビジネスのレベルが上がってくる時必要になってきますが、初期段階では必要ありません。商品がまだ絞りきれていなかったり、製品の改良があったりでカタログを作っても、すぐに変えなければならなくなります。アメリカ経験が3-4年たち、大手小売市場に向かう時に、競争相手のカタログも研究しながら、さらに良いものを作成するのです。

・ プレスキット作成 

 ブランドを広く伝える為には、メディアに取り上げられることが費用もかからず効果が絶大です。その為にも、プレスキットをあらかじめ作っておき、有力小売店にも渡せるようにしておくと良いと思います。プレスキットは、プレスルームに置くことも出来ます。内容は、ブランドコンセプト、フライヤー、ラインシート、写真で充分です。わざわざ作らなくとも、営業ツールを全て入れておき、カバーを用意するだけでも充分です。

 プレスに取り上げられる為には、良い写真を用意しておくことと、先方が撮影することも多いので、撮影用サンプルをすぐに送れる準備をしておくことです。一般用の雑誌に載る為には、「製品がどこで買えるか」という店舗情報が必要になりますから、しっかり取引ができている取引先と話をしておくと良いでしょう。製品が買える店名、住所、電話、Webサイトなどが必要になります。有力な雑誌に掲載されると、かなりの数の消費者がその小売店に注文がきます。雑誌発売以降、2-3週間は売れ続きます。アメリカ市場の大きさを感じることでしょう。雑誌数の数が日本の数分の一で市場規模は三倍あるので、多くの人が同じ雑誌を見ることになるので効果絶大です。

・ 店頭用フライヤー 

 小売店売価がおおよそ100ドル以上の場合、店舗に専用フライヤーを置くと販売促進効果が高くなります。店頭で見て、その時は買わずにうちに持って帰り、家族で見て買おうと決断するという流れは一般的です。WEBサイト、SNSも必ずチェックするでしょう。1回だけでは意味が無く、恒常的に、店頭フライヤーが店に置かれるような工夫が必要です。バイヤーに喜ばれる販促サービスです。「理解し納得して買う製品」には有効です。

・ デモ

 ブースに「動き」のあるデモは、人を引き付けます。キッチンツールであれば何かを食べてもらうというデモは大きな効果があります。機能が「売り」のものは、その機能を見せる、使ってもらうというように。デモは人を呼び、黒山の人だかりにさらに人を集めるのです。

 黙って、シーンと見せるというよりも、声をかけながら、笑わせながら、デモを行うと効果はさらに大きくなります。たとえ英語で失敗しても、アメリカではどうということはありません。逆にそれがバイヤーにとっては面白いのです。ドンドン、デモをやりましょう。そのデモは、将来店頭での消費者に向けた販促デモに繋がっていくでしょう。


「受注関連で準備するもの」

・ 販売スタッフ準備

 アメリカ人セールススタッフの「チームによる販売スタッフ体制」にするとよいのです。人材派遣会社で手配できます。貴社の販売スタッフは、製品情報、生産背景には充分慣れていますが、アメリカ展示会の商談にはそう慣れていないことでしょう。アメリカ人セールススタッフは、その逆ですから、いかにうまく情報を交換し、しっかり商品情報を共有できるかがポイントになります。

 紙に書いた情報を前もって渡ししっかり暗記してもらったとしても製品を見ていないわけですから限界があります。展示会前日のミーティングが鍵です。しっかり打ち合わせを行い、その後に「ロールプレイ」をやることが最善の方法です。ロールプレイを四回ほどやれば、おそらくほとんどの製品情報は暗記するでしょう。ぜひ、展示会前日2回、初日当日2回やってください。

 毎日の反省ミーティングもきちんと行ってください。昨日はこうだった、今日はこうしようということです。よくないところ、改善してもらう点は、しっかり伝えてください。遠慮してはいけません。ストレートに言うのがアメリカでは普通です。

 販売スタッフの洋服、メイクにも気を使ってください。製品がナチュラル色なのに、洋服が強い色では合いません。メイクもナチュラルにすべきです。展示会前日にきちんと説明してください。プロのスタッフですから当然のことと受け止めてくれます。

・ PO(受注書)準備

 英文の受注書のことで、商談では「ピーオー」と呼びます。品番、色、サイズ、単価、合計欄、納期、サインの欄を設けます。注文の明細は全てこのPOに記入するのです。3ページの複写方式が普通です。初回出展の会社は、アメリカの文具店で売っている「既成のPO」に会社シールを貼って使っても全くかまいません。アメリカに来てからでも入手できます。その場合には、貴社の連絡先シールを用意しておいてください。

・ 文房具準備

 ペン、ホッチキス、クリップボード、計算機などです。これは説明するまでもないでしょうが、特に、商談テーブルが無い場合は、クリップボードが必須です。顧客情報やリアクションメモを整理するので、ホッチキスは多用します。毎日の受注書やリアクションメモを入れるビニール袋もあると便利。ゴチャゴチャしたものを目隠しする白布(50cm四方程度)を数枚用意しておくとブースがきれいになります。

6. 展示会のスタート

 展示会がスタートした・・・と、いまからイメージしてください。おおよそ、次のような状況が想定されます。充分イメージ・トレーニングしてください。


「バイヤーがブースに入ってくる」

 多くのバイヤーをブースに引き付けるには、「プレゼンテーションの魅力」に尽きます。オシャレで、カッコよい、分かりやすいブースをバイヤーは見逃しません。「何か目新しいものがありそう」という雰囲気を強く出すわけです。ブースの中に、売る側のスタッフが多いと入りにくいものです。といっても、ブースの外を人垣でブロックしてしまったら、それこそ入りにくくなります。

→ (対策)ブースの中での各スタッフの役割を決めておく。乱れたディスプレイを直す役、受注セットをきちんと準備する役など。プレゼンテーションの更なる工夫を!「シンプルに、分かりやすく」がアメリカ人のバイヤーには心地よいのです。ポイントは、分かりやすいディスプレイ、入りやすいスタッフの位置、そして、笑顔でハーイ!です。


「バイヤーに説明をする」

 バイヤーに説明する「商談のストーリー」は、あまり長すぎず、簡潔に商品のポイントを分かりやすく説明するのです。アメリカ人のセールススタッフのために、英語で箇条書きにまとめておいてください。

→(対策) 「スタッフ用説明マニュアル」を作成する。できるだけ簡単な英語で分かりやすく箇条書きに。企業説明は、「うちはすでに**年間、日本でビジネスをやっていて、生産は・・・・」くらいで充分。バイヤーにとって、関心は商品ですから。次の内容で充分です。

簡単な会社概要

 ブランドコンセプト

 商品の違い

 価格

 納期

 納品方法

 推薦する人気商品


「バイヤーから質問を受ける」

 バイヤーからの質問は多くはありません。約10パターンです。この答えはしっかり準備しておいてください。

→(対策) 「模範解答」を英文で準備し、スタッフ全員で確認しておく。

 この商品はいくらですか?

 ラインシートはありますか?

 その価格は、アメリカの国内価格(Landed Price)ですか?

 ミニマム・オーダーはいくらですか?

 この商品の色違い、サイズ違いはありますか?

 これらの商品の納期はいつですか?

 展示会後注文はできますか?

 一番売れている商品はどれですか?

 アメリカにコンタクト先はありますか?

 どこから出荷するのですか?


(大手バイヤーの主な質問)

・ 現在どこと取引していますか?

・ アメリカ国内に在庫はありますか?

・ 倉庫はどちらですか?

・ 日本からコンテナで出荷することはできますか?

・ リードタイムは?

・ EDIシステムは可能ですか?

・ ケースにいくつ入っていますか?

・ アメリカ国内送料を入れた価格を出せますか?

・ 数量単位の価格は出せますか?

・ うちのオンラインストアでも扱えますか?

・ ドロップシップはできますか?


「受注を受ける」

「注文しましょう」と言われたら、すぐに受注書(PO)が出せるように、POをクリップボードにペンとともにはさんで用意しておくとよいでしょう。「テンポのよい受注活動」をしてください。そして、特に「売れ筋」「人気商品」は漏れなく注文してもらってください。

→(対策) バイヤーの注文が終わったら、「あ、これはとても人気があるので、加えた方がいいですよ」と、漏れた人気商品を強く推薦する。ポイントは、受注書を書く練習もすると良いのです。実際にPOに書いてみると、よく理解できるようになります。


「写真を撮る」

 今後バイヤーとは長い付き合いになるかもしれません。顔と名前を覚える為に、「記念写真を一緒に撮らせてください」と言って写真を撮り、店舗管理シートに貼り付けておくと、後々大変便利です。顔を見ると、そのバイヤーと話したことが思い出せますから。

→(対策)常にフレンドリーに、常に笑顔いっぱいで。アメリカのバイヤーはそういう雰囲気が心地よいのです。撮った写真は必ず送ってあげましょう。良い人間関係ができていきます。アメリカでも、日本と同じで、「良い人間関係」がビジネスに良い影響を与えます。


「注文しないバイヤー」

 バイヤーが気に入っているにもかかわらず注文まで行かない場合(Noteすると言います)は、理由は二つあります。ひとつは、その場で決断できない場合です。

→(対策)展示会後に注文しようとその時は思っていても、展示会が終わって時間が経てばたつほど、商品の印象は薄れていきます。注文の締切日(Cut Dateと言います)を、せいぜい展示会後1週間に決めておくと良いでしょう。

もう一つの理由は、「会社組織」の場合、「上司との相談」が必要なことです。

→(対策)締切日を明確にすることと、上司に説明しやすいように資料を多めに渡すことです。サンプルとともに送ってあげるのも良いでしょう。関心のあった製品はラインシートに印をつけてください。展示会後、Eメールでプッシュする時も、ブースの写真を送ると、展示会の様子、会話の内容を思い出してくれるでしょう。


「展示会中にできる工夫」

(初日が終わったら)

 アメリカの展示会では、初日に50%の入場者があると言われているので、初日の商品の反応を捉えるのは大変意味があります。初日が終わったら、「評判の良かった商品」や「注目されない商品」の傾向を見て、ディスプレイを変えるべきか、商品構成を動かすかという検討を行い、二日目、三日目に備えるとよいでしょう。

 日本とアメリカの反応は違うので、「アメリカではこういうものが売れるんだ」という「予想外の結果」というのは良く起こります。初日の反応を分析することはその後の受注成果、商談に大きく影響します。初日は、展示会会場全体を一通り見て、二日目、三日目に注文をいれるというバイヤーも多いのです。

(展示会開催中にできること)

 展示会が始まってしまっても、販売を促進する為に、「ディスプレイのチェック」は常に行うことをお勧めします。1時間ほどたって、ブースへの来場者が少ない、通るバイヤーの視線が商品に行かない・・という場合は、何か問題があるのです。「分かりにくい、」「面白そうな感じがしない」・・など。バイヤーのハートをグッと引き付けるディスプレイに欠けるのです。

(アメリカに学ぶ)

 展示会はアメリカのマーケットそのものを表現しているとも言えます。展示会期間中、特に最終日は、次の点に配慮して行動すると良いでしょう。

・ 展示会全体を視察し、アメリカのライフスタイル、マーケットのトレンドを学ぶ。

・ 注目すべきブースはダイレクトリーに印をつけて、後日ウェブサイトなどで研究する。

・ 競争相手を見つけ研究する。話しかけるのもアメリカでは普通です。

・ 他社のブース・デザイン、ディスプレイ方法を視察する。

・ 賑わっているブースの「理由」を研究する。

・ 業界の資料を集める。(無料業界紙など)

・ 近くのブースの販売スタッフと話しをしてマーケット情報を得る。

・ 人的ネットワーク作りを行う。

・ 次回出展に備えて、ブース改善の方針を最終日までに作っておく。重要です。

 アメリカは、ビジネス人生にとって、大いに学べるところです。最初は、 アメリカは大したことないなと思うのが普通です。しかし、それは、ただの感覚の違いだけで、優れている要素、勉強になる要素はたくさんあります


「展示会後の総括」

 展示会後の総括では次の点がポイントになります。展示会総括をきちんと行って、展示会総括レポートとしてまとめてください。その積み重ねによって、展示会ごとにアメリカマーケット開拓は前進していきます。

・ ブースデザイン、レイアウトの反省

・ セールススタッフの反省

・ 商品構成

・ ディスプレイ

・ 営業ツール

・ 価格

・ 展示会後の行動方針

 アメリカ市場開拓は、こうしたビジネスン体制に準備に時間がかかるのです。急いでそれをやっても、「アメリカの感覚」にあっていなければ何も効果はありません。したがって、時間をかけて前進していったほうがむしろ良いのです。売り上げが中々大きく伸びない段階を耐えていくのです。いろいろな要素が「アメリカの感覚」と嚙み合って、ある時、カチンと「歯車が合う」瞬間が来ます。そこから、売り上げは着実に伸びていくのです。皆様の展示会の成功をお祈りします。